太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

インターネット離れに逆行して固定回線を契約してパラダイムシフトした話

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photo by LarsZi

固定回線契約をしたら通信費が月額1050円安くなった

 読書する時間が減ってきてしまったので、ネット離れを視野に入れて固定回線契約をしていなかったのであるが、固定回線契約を行なって月額通信費が1050円安くなった。つまりアパートが地デジの電波障害による難視聴地域であったことからケーブルテレビの一部サービスが大家負担で受けられ、そこに付随した双方向通信でインターネットも無料で使えるようになったということである。そしてWi-Fi環境があるなら携帯電話のXi通信は3GBまでの契約の十分なのでライトプランに変更した。はい、解散。

アルコール依存症の治療は、酒を一滴も飲まない状態を目指す。適量の酒は健康に良いと言われても、依存症になる人たちは「適量で止める」ことができないからだ。でも私は今のところネットを全く使わない生活は考えられない。そこが難しい。

私がネットから離れる方法は、「ちょっとネットに貼り付いてしまっているな」と思ったら何も考えずにパソコンの電源を落としてしまい、離れて出かけたり家事などをすること。パソコンを立ち上げるのに時間も手間もかかることを歯止めにしている。今のパソコンはWindows XPだけど、最近のWindowsだと基本がスリープモードと復帰の繰り返しなのかな、それは困るなと思っている。
 
ネット依存について思うこと | blog.yuco.net

 奪われるアテンションの話をしていたはずなのに安くなるなら固定回線を契約するという貧乏性を自分の場合は発揮した。ただ上記エントリの例えに乗っかると一度アルコールが抜けてしまうと、適量は意外にできるのかもしれないとも思っている。本エントリでは「重度に使う」から「全く使わない」の中間にもっていくという段階的なインターネット離れが提唱される中で、固定回線契約に至った経緯について書こうと思う。100から50にしていく話が上記エントリであれば、20から50にしていく流れである。

128kbpsの世界

 そもそも僕はネット回線といえばDOCOMOのXi回線でテザリング可能なGalaxy S2 LTEのみを使用しており、固定回線やモバイルルーターなどは持っていない。それなりに忙しくて出張も多かったので自宅に固定回線を持つ必要性が少ないという前提がありつつ、2012年9月までは通信容量制限がなかったので問題は起こらなかった。それが2012年10月から7GBを超えた通信を行うと128kbpsになるという制限がXi回線に掛かるというアナウンスがなされていた。

 7GB。携帯電話のデータ通信として使い切るのは意図しないと難しいが、Macに対して自由にテザリングしていたら1日で突破するという微妙な数値である。それを見越してiPadをメインで使用するなどといった対応をとっていたが、案の定で超えてしまった。それでも「スローネットライフ」などと考えて、特に回線速度上昇のための施策は行わなかった。そもそも繋ぐことが少ないのであるが、制限が掛かっても128kbpsで繋がるというのは大きい。高校のときまで使っていたISDN回線は64kbpsで充分だったわけだし。実際にしばらくそれで過ごしてみると以下のような具合であった。ちなみにこの期間は2012年11月15日(日)開催の文学フリマで頒布される『奇刊クリルタイ』の原稿作成・校正作業の真っ只中であり、ネット回線問題がなければもう少し効率よくできたのではないか問題がある(ステマ)





デバイスOS機能アプリ128kpbs制限下での状態
MacBook ProMac OS X
Moutain Lion
WebサーフィンChromeちょっとしたWebサイトを見るのもかなり苦労した。画像は表示されないものと思って諦めがついた。裏取り作業でイライラ
メール標準メール送信に時々失敗する。128kbpsである事とは関係ないがデフォルトアカウントをメーリングリストに登録していないと、配信元メールアドレスを設定していてもエンベロープの経路を見て弾くらしく、メーリングリストに配信されないミスがあった
TwitterEchofon他の通信の影響からか表示できなくなったり、書き込みできなくなることが多かった
メモ・スクラップEvernote同期を諦めるレベル。他のデバイスに反映されないのでメモ書きとして使うこともなくなった
通話・チャットSkypeチャットレベルでも途中で「保留中」となって相手に発言がいかず難儀した
原稿修正Google Docsあるていど一度に更新しようとするとタイムアウトする。それなりの分量を切り取ったら貼り付けできなくなって冷や汗
DTP確認Dropbox何度かのタイムアウトにめげずにダウンロードする必要がある。出勤前の作業時間がダウンロードだけで終わるという惨事も。赤入れしたPDFを送るのは諦めて修正点を直接メールに書いて送付
Galaxy S2 LTEAndroid 2.3WebサーフィンChromeちょっとしたWebサイトを見るのもかなり苦労した。スマートフォン用でも重いサイトが増えたと思う
メール標準メール問題なく利用できた
RSS確認RSS Rob24時間に一回2000件取得しておく。一旦取得しておけばオフライン使用が可能であるし、スターはあとから同期できるので便利
ブックマークはてなブックマークほぼ問題なし、ただ地下鉄で使うことが多いのでオフライン対応が欲しいところ
TwitterTwitter問題なく使用できた
メモ・スクラップEvernoteオフライン使用にしていたはずが、結局ぜんぜん表示できず
通話・チャットSkypeチャットレベルでも途中で「保留中」となって相手に発言がいかず難儀した
通話・チャットLINE問題なく利用できた。スタンプと低速回線の相性がよい
DTP確認Dropbox何度かのタイムアウトにめげずにダウンロードする必要がある。肩がこった
iPad第三世代iOS 6WebサーフィンChromeちょっとしたWebサイトを見るのもかなり苦労した
メール標準メール特に問題はなかった
TwitterEchofon問題なく使用できた。結局連絡手段として一番役にたった気がする
通話・チャットSkypeチャットレベルでも途中で「保留中」となって相手に発言がいかず難儀した
原稿修正Google DocsiPadだと機能限定版になってしまってそもそも使いにくい
DTP確認Dropbox何度かのタイムアウトにめげずにダウンロードする必要がある。失敗率が特に高かった

 全体の傾向としてMacはマルチタスクで色々な通信を同時に行おうとしてしまうため、ほとんどのサービスの利用ができなかった。逆にiPadやAndroidはそこまでバックグラウンド通信が多くないからかTwitterやLineを使用する分には問題が少ない。SkypeについてはOSに限らずとにかく不安定になるので128kbpsで使うのは諦めたほうがよいと思われる。Evernoteもオフラインノート機能があるぐらいなのであるが、通信が遅いと使い物にならない感じであった。とはいえ自分のネットの使い方は基本的には「RSS→はてなブックマーク→Twitter・Evernote」という流れであり、そのような使い方であれば問題は少なかった。RSSが全文配信してないサイトは無視する運用にならざるをえなかったけど。しかしこの期間はミニコミのための作業の効率が悪かったし、ブログも小説を全く進まなかったという事実もある。

「使い放題」の錯覚と仮想的パラダイム

 インターネットや携帯電話の通信は定額による「使い放題」が当たり前となった。この流れがLTEによって逆行してしまったと思いがちであるが、制限下であっても128kbpsで「使い放題」である。そもそも「使い放題」には通信容量のノックアウトが存在する。例えば128kbpsであるとすると1秒間に16キロバイトの通信ができるということであるから、これに1ヶ月分の時間を掛けると「128k / 8 × 60 × 60 × 24 × 30 = 約39.5GB」になり、その値が理論的限界となる。実際には様々な要因でさらに遅くなったり、繋がっていない時間などがあるため、もっと少なくなる。

 これは100mbpsでも原理的には変わらない。ただ、現在の使い方においては十分に大きいから有限であると感じにくいだけである。堺屋太一は『知価革命』において「ある時代のパラダイム(社会通念)は、『その時代は何が豊富で、何が貴重な資源であるのか』を見れば明らかになる。」と書いているが、私にとって「通信容量は有限であり、貴重な資源」であると見なす事にしていた。スマートフォンによる通信量の増大に伴ってアメリカを筆頭にモバイルデータ通信の従量課金回帰が2011年から起こっており、日本の通信会社もモバイルにおいては相応の制限をしてくることが予測されていた。実際、DOCOMO・AU・SoftbankのLTEが横並びで7GB制限を掛けてきている。。つまり、これに先駆けて「貴重な資源」と見なすという仮定のごっこ遊びをゲーミフィケーションとしてきたのである。

 もともと出張や自宅作業が多い仕事形態であったため、モバイル通信が必須であったのであるが、各社が制限を掛けてくるのであれば余裕があるうちにそれを前提とした動きを準備しておかないと損をしてしまう可能性が高い。ひとつの試行錯誤は各Webサイトの情報をクラウド内で収集して事前に「まとめ」を行なってEvernoteに格納しておく事によって私とセカイのラストワンマイルの通信量を削減するということである。

 「Paper.li - Get Fresh, Relevant Content Delivered Daily」などTwitterのリンクを新聞風にまとめるサービスを「はてなブックマークのお気に入り」などをソースにして行うようなものであると考えていただければよい。あまり大げさな運用は考えていないし、一般公開する気もない。Evernoteの同期がスマートフォンの回線だと辛いので、結局のところで実用性はアレなのだったのだけど便利ではあるし、アテンション・エコノミーという観点からは役立つ。また自前で作っていた「RSS→はてなブックマーク→Twitter・Evernote」という流れは「はてなブックマーク」の標準機能として実装されたが、それが提供される前からできていたことが重要であり、作る過程でのノウハウ蓄積は無駄になっていない(/_;)

 これは「小は大を兼ねる」といった自身のパラダイムによるものが大きい。お金があってもなくても、使う金額が少ないことには越した事はないし、通信量も同様である。むしろ余裕があるからこそ、失敗しても大丈夫なようにセーフティネットを張った上で色々と試すことができる。本当に『闇金ウシジマくん』の世界にいたら、できない事の方が多いであろう。つまりこの冗長性を保てる程度の物理的・精神的な余裕こそが「豊富な資源」なのである。養成ギブスは脱ぎ捨てられるから価値がある。アルビン・トフラーのいう「引き返せない楔」を軽やかにかわしながらバンジージャンプを行うのだ。負け惜しみコングラチュレーション。

私にとっての「貴重な資源」と「豊富な資源」

 話が壮大に逸れたが、固定回線の必要性を感じた理由として前述の通りミニコミ編集・ブログ更新・小説執筆等の作業効率が悪くなったという事が大きい。端的に言えば承認欲求的なアレが今となっては「貴重な資源」であると感じているから、それに対しては金を払おうと思ったわけである。その前提でセカイを見渡すと、先月から無料のインターネット回線サービスが偶然にも開始されていた。ただそれだけのことであるが、下手に我慢できてしまっていたら月額1050円多く払って不便なままであったであろう。私はテレビをもっておらず、セットトップボックスなど無料でも要らなかったのであるからスルーしていた可能性が高い。不便を感じているのであれば、対応方法を常に考えておくとなんらかの打開策が見つかる事もある。これはセレティピティではなく捉えるためのアンテナの問題であり、アウトプットを意識したインプットの方が捗るという当たり前の話である。

 iPadと低速回線のテザリングでもブログ更新はできるが、それをやるのは煩雑である。残念ながら私には猛烈な「書きたい欲」がない。Twitterを8ヶ月ぐらいストップしたり、ブログを半年ぐらい更新しないことはザラであった。そもそもネット回線がなかった時期もある。別に私の考えなど公知する必要などないのであるが、アウトプットを行うために考えた事や調べたことが自分のためには身になっているし、それがキッカケでミニコミに参加したり、オフ会に呼んでもらったりもしている。人より少ない「貴重な資源」としての「書きたい欲」を刺激するために環境を整えることも悪くないと思ったのである。我々の使える資源は一定であるが、何を豊富にするか、何を貴重にするかはカノン問題のように一定の範囲では選択可能である。

 久々に営業や工事業者が部屋に入ったので部屋を猛烈に片付けた。そういう事も含めて自分の部屋にいるのが快適である。ブログとして書く文章も人に見せる程度には整えるという効果がある。考えた事や話したことなど、どんどん忘れていってしまうのであるがブログとして残っていると順を追って思い出せる。頭の中で上手く行ってるはずの論理も人に説明しようと書いてみると穴が見つかることが多い。それもまた「貴重な資源」ではあるが、私自身で生成できるものでもある。別にプロブロガーのように「豊富な資源」にまで育てようとは思わないが、適度に頭と手を動かしていこうとは思う。もちろんクネクネ事案や金銭的収入があればさらに嬉しい。私にとってインターネット回線は再び「豊富な資源」となった。その一方で承認欲求や知識欲は「貴重な資源」のままとなっている。私に取って「何が豊富で、何が貴重な資源であるのか」を見れば私のパラダイムも明らかになるが、それは「何が豊富でも貴重でもない資源なのか」を定義することでもある。このパラダイムにシフトした私の行動の変化について観察していきたい。バンジージャンプの命綱が切れてしまわない事を祈りながら世界線を飛び越えよう。

パラダイムシフト (POE BACKS)

パラダイムシフト (POE BACKS)