太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

文学フリマ15で初めての接客をした話

文学フリマに行ってきたよ

 2012/11/18(日)に開催された文学フリマ15にサークル参加してきた。文学フリマ14に客として初参加して編集長のリパさんにお会いして、婚活サービスレビューの依頼から紆余曲折を経て『奇刊クリルタイ7.0』における企画記事・校正・即売会の設営・売り子まで参加。編集長とリアルで会ったのは文学フリマ当日を除くと出張で偶然近くに行った時の1回だけである。現在となっては珍しくもないのかもしれないが、本職の仕事をしながらリモートで集団作業していくというのはなかなか大変だった。

 考えてみればアルバイトを含めて直接的なリテール接客という行為は初めてかもしれない。当日は「過度な呼び込み禁止」とアナウンスで釘を刺されてしまったこともあり、加減が分からない中で声掛け事案があまりできなかった反省がある。近くに寄ってきてくれた人には話しかけたので買ってもらう確率をいくぶんか上げられたかもしれないが、そこに至るまでが難しい事を実感した。

 新人研修で「人を動かすプレゼンテーション」という事をさかんに言われてきたのであるが、購買行動に至るまでの「動かす距離」を算定しておくのが重要であると思っているところがあった。つまり単純にプレゼンの強度をもって長距離動かす事を訓練するよりも、既に購買行動に近い集団を探しあてるのがエコノミーだし、プレゼンとしての強度が低くても対応できる。

タダと1円は違う

 なので十分に大きい鉱脈が既にあるのならば営業コストが掛かりそうな集合体には黙っているという足切りマーケティングを行なって、その分の機会費用をロイヤルカスタマーを醸成するように動いた方が効率が良いわけであるが、「切れる足なんてあるのか?」を見極める必要もある。集団の鉱脈が小さい場合の戦略は別途必要であり、その意味では個人としての認識がズレていたところもある。

で、このタダ、というのは文章という意味に留まらず、実は感情もタダなんだな、と最近思いました。よくいるでしょ、「今度飲もうよ!」とかネットで言う人。「一緒に頑張ろう」とか。「○○はオワコン」とか言うコメントに大して考えもなく「いいね!」ボタンつけたり。プラス、マイナスに限らず、ネット上に表明される感情は基本、コストのかからないものなので、皆気軽に表明する。それはそれでいいのですが、実際のところどーなのよ、とはたまに思うところです。

つまり、今回何が言いたいかっていうと、ネット上をメインに活動していると、そういう「タダ」の感覚に慣れてしまうという事です。これは結構怖い。なぜって、そういう「タダ」の感覚を「真に受けて」行動してしまって梯子を外されてしまう場合が結構多いから。

 『『奇刊クリルタイ7.0』という同人雑誌に出させてもらいました - かくいう私も青二才でね』のような炎上マーケティングがあったり、事前にRTが沢山あったり、Amazonでの予約数が過去最大であったりとネット上のフラグは揃っていたが、なかなか「飛ぶように」までとはいかずに上記の文章を実感することとなった。

 コミティアと同時開催・即売店の場所が奥まっていたりという外部要因もあるが、はてな村民かつ文フリ参加者なんて典型的なノイジーマイノリティである上に、自分の観測範囲に偏りもあったという話である。そのサンプリング計測を元に外側でも同じような確率分布であろうと見誤ってしまうのは危険であろう。炎上はAIDMAにおける認知・興味あたりまではいけたかもしれないが、そこから先は大きな壁になっている。

相手を動かす距離とクリック数

 距離の話に戻すと、イベントで買うに至るまでは1000円という書籍代と期待に対する均衡の話だけではなくて、現場に行くための時間や労力や交通費といった直接的コストと、開催期間までの記憶や買いたい気分も残っているといった維持コストが関係する。Amazonのワンクリックはひとつの革命であり、定期購読によるゼロクリックはもっと革命的な方法である。そんなわけで、「興味の持続」という高難度な施策よりも、その場の勢いで予約完了させたりアフィリエイトをクリックさせるというコンバージョンを重視した方が楽なのは言うまでもないであろう。実際にAmazonでの予約数は過去最大であったわけであるし。

 その一方で会場に来ていて、店の前を通るという時点で中距離の範囲にはこちらの意図とは関係なく近づいてきているとも言える。宣伝を行うのにあたって別に全人格を賭けて買うようなものではないし、こちらから全人格を矯正する必要性もなければ、その力もない。欲しい属性のうちの幾つかが充足されれば購買に至るわけで、こちらが想定しない理由もありえる。

 N次元空間における購買のためのスポットは複数個できて、各々のどこに吸い寄せれば良いかという判別において、例えば「文フリにコミットしているか」「はてな村民であるか」といった属性によって有効な売り文句は異なるのであるから同時攻撃が可能なスケブやPOPでパッシブに主張しておくのは重要だとか今更ながら感じた。過度な呼び込みができない中で「望月会長のインタビュー」と「青二才が仕事辞めて書いたレビュー」のどっちを売り文句として言ったら良いのか悩んだりした。進研ゼミが出来ない相手には沈黙せざるをえない。

商品に思いを付与する

 本誌インタビューにも登場いただいたアエルラの社長は「二人が初めて会った場所なのだから良い思い出になるようにしたい」と言っていて、それはすごく重要だと思う。『ラグナロクオンライン』やらmixiのOFF会やらで会って結婚したなんて話は周りに溢れているし、編集長も婚活の結果である。それでも公にはロンダリングされて「趣味の集まり」などに切り替わってしまうのであろうが、当人達にとっては最初に会った場所であり、一生残るものである。全然レベルは違うけど、本との出会いにおいても接客という要素が少しだけ付与されて残るのかもしれない。やってきた人達にとっては本当に今更の事ばかりだと思うけれど、自分にとっては良い経験になったのでまた参加したい。

 文学フリマ15の『奇刊クリルタイ』ブースにお越し頂きありがとうございました。「リアルに出る」という事は、その幻想をぶちのめす機会なのかもしれませんが、購入頂ける場合もあるという希望を実感できる機会なのかもしれません。買って頂いた方にはただただ感謝です。

奇刊クリルタイ7.0

奇刊クリルタイ7.0

  • 作者: クリルタイ,白河桃子,熊代亨,ステファン・ラピー,松永英明,望月倫彦,republic1963,古田ラジオ,奇刊クリルタイ編集委員会,吉川にちの
  • 出版社/メーカー: クリルタイ
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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