太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

価値工学理論から見るコストパフォーマンス厨の原理について

実践 価値工学―顧客満足度を高める技術

価値工学とは?

 主体なし目的なしの過程によってN個のうちの何れかの「あるべき姿」と「現状」が近距離になった場合に僅かな追加コストで達成していきたいという考え方の前提となる理論として価値工学<バリューエンジニアリング>があります。「価値工学」とは製品やサービスなどの価値を最大にしようという体系的手法のことであり、5つの基本原則があります。

  1. 使用者優先の原則
  2. 機能本位の原則
  3. 創造による変更の原則
  4. チーム・デザインの原則
  5. 価値向上の原則

 そして、価値工学において価値Vは機能PとコストCからなる定式「V=P/C」で計算されます。ここでいう「機能」とは5Wが明示化された効用の事です。機能と1Hの効率性によって「費用対効果」とか「コスパ」と無意識的に使われているものですね。「How much」を含めた5W2Hで表現することも多いです。

 このため「機能」からは本質的に「手段」は隠蔽されることになります。「見えないところの高級素材」みたいな情報はそのまま「機能のアピール」なのですね。「V=P/C」はある商品やサービスがもたらす効果と費用の妥当さの計量といえます。

 ミクロ経済学で利用される効用関数においては一般的にコストを掛ければ掛けるほど満足度が上がってしまうので予算を固定化する手法が取られるのですが、価値工学においてはコストで割るという作業が入ることで具体的な予算設定を一旦括弧に入れる事ができます。

バリューエンジニアリングは1947年にアメリカで開発されたバリューアナリシス(Value Analysis、VA)が母体となっている。GEのL.D.マイルズが開発者である。この開発のきっかけとして、こんな話が伝わっている。


1940年代の中頃、GE社では製品の塗装のため、オーバーヘッド型コンベアを用いて、次々に流れてくる製品に塗料を吹き付ける作業を行っていたが、必然の結果として塗料がコンベアを伝わって床に流れ落ちていた。塗料は可燃性物質であり、引火すると危険なため、GEでは社内の火災防止規則としてコンベアの下にアスベストシートを敷くことを義務付けていた。しかし、戦争が終わった直後の材料難で、アスベストシートの入手が非常に困難であった。そこでマイルズは、「アスベストと同じ効用を持ち、もっと安い材料が他にないか」と思い、不燃材の業者に協力を依頼しつつ、ついにその代替品を見つけた。しかしGEはそれを不可とした。火災防止規則では、アスベストシートを使わなければならないからである。マイルズはあきらめず、その代替品の実験を行ってアスベストシートと同じ効用を持つことを証明した。やがてGEは火災防止規則を改正し、その代替品を全面的に採用した。


その後、アメリカ国防総省船舶局が「バリューエンジニアリング」と呼んで導入し、以後この名前が一般的になった。


他に「戦時中、より少ない資材、工数及び、代替資材で同等の機能を有する製品を使用する事を目的とした戦時設計に端を発する」という説もある。


日本への導入は1960年頃である。コスト低減を目指す製造業から導入されはじめた。より低コストの材料の採用を狙って資材部門から導入が始まり、その後企画部門や設計部門、製造部門へもこの手法が広まっていった。バリューエンジニアリングの適用範囲は間接部門、サービス業などの非製造業へも適用が広がっていった。


バリューエンジニアリング - Wikipedia

あるべき姿と現状の差分

 この「V=P/C」を前提とした状態で、あるべき姿をP'とし、その際のコストがC'である場合、その施策が引き上げる価値V'は以下のように表現できます。

  • V'=(P'/C') / (P/C)

 例えば機能が10,000⇒15,000にアップグレードし、その代わりコストが5,000⇒6,000に上がったとすると2.5/2で25%の価値増大が行われたということです。

  • V'=(P'/C') / (P/C)
  • V'=(15000 / 6000) / (10000 / 5000)
  • V'=1.25

あるべき姿と現状の差分がない場合

 この式は以下のように式変形を行う事が可能です。

  • V'=(P'/C') / (P/C)
  • V'=(P'/C') × (C/P)
  • V'=(P'/P) × (C/C')

 ここであるべき姿F'と現状Fが同じであると仮定されると以下のように展開されます。

  • P'=P
  • V'=(P/P) × (C/C')
  • V'= C/C'

 つまりP'=Pという事が確定した場合においてのみ、コストを削減すれば削減するほど価値が引き上げられる図式になるという事です。これは別の手法(P''/C'')を(P'/C')の代わりに適用する場合においても「P=P'=P''」が成立する限りにおいては同じ図式になります。同じ効果ならコストが低い手段をとった方が価値が引き上げられるという事です。

コストが低くなると

 同じ効果が見込まれるのであれば、出来る限りコストが掛からない方が価値が高いというのは自明なように思われますが、これは使われなかった分のコストを他に投資する事でなんらかの効果を得る事が可能になるからです。つまり一方では新たな投資先を求める必要が出てくるという事です。

 よってコストの削減だけを考えても、代替策がないのであれば本質的には意味がありません。例えばシステム導入の提案を行う際に労働量削減の定量評価を行って金額を算出するのが一般的ですが、だからといって担当者を即座にリストラしたり配置転換できるかという問題は別に発生します。担当者が手持ち無沙汰になってメタルヘルスの問題に繋がるという成果しかでない事もありえるのです。

 個人についても貯金や趣味や休息といった無リスク投資が可能ではあるのですが、心理的なコストを含めて無リスクなのかは微妙な側面があります。例えばなるべくしてなった円安で30万円儲けたなどと聞くと「ぐぬぬ」となってしまうでしょう。

暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学

価値上昇パターン

 一方でコストCだけに着目せず、機能Pとの関係性について考えると以下のパターンにすれば価値を高める事が分かります。

  • 機能Pが上昇し、コストCが機能上昇分を上回らない範囲で上昇する
  • 機能Pが上昇し、コストCが同一
  • 機能Pが上昇し、コストCが下降する
  • 機能Pが同一であり、コストCが下降する
  • 機能Pが下降し、コストCが機能下降分よりも下降する

 つまり「P' / P >1」という条件において価値はPとCのバランスの問題になり、コストを上げても下げても価値があがる施策が利用できます。コストをかければかけるほど価値があがるという確からしい根拠がとれたものがあれば、それに出来る限りはコストを掛けてしまった方が良いという話になります。コンビニ店長さん( id:lkhjkljkljdkljl )のやり方がすごく良いと思いました。

 ほめられたのは、ある単品の売上がちょっとあたまおかしいレベルに到達したからです。よほどすごいことをしたんだろうと。


 しかし、方法について質問されても、俺には答えられることがありませんでした。なんでって、新商品の画面を見た時点で、それを見た人がみんな「これは売れる」と思ったからです。本部的にはおすすめの商品ではなかったんですが、みんな売れるっていうんだから売れるんだろう。だから大量に発注しました。すでにこの段階で、そのジャンルの商品としては上限に近い数字だったんですが、まあみんな売れるっていうし別に気にしなくてもいいだろーくらいにしか思ってませんでした。


 そしたら一日で売り切れました。一日もたなかったということは、もっと売れる可能性があるということです。そこで2倍発注しました。この時点で、コンビニとしてはありえない発注数になってたんですが、賞味期限も数日あるし、別に問題ないだろう。ただし告知しないと売れないので、店に入った人間がみんな見える場所に置いた。そしたらそのぶんも一日で売り切れた。なので、また2倍発注した。


http://lkhjkljkljdkljl.hatenablog.com/entry/2013/01/24/091132

 配当が2倍になるのであれば、勝つまで賭金を2倍にしていけばいつかは回収できるというギャンブルで使われる「モンテカルロ法」の逆を行っているように見えるのですが、同じ関数に対して徐々に賭けていって「確からしい」の確信度合いをコストを増やしたり、告知を追加したりしています。サルの手とか、干し首系の話だと三回目に大賭けしたら負けるっていうパターンだけど、単一の人為が寄与しにくい限りにおいて現実にそんなことはあまり起こらないわけです。一方で十分にコストを消化しているために予約商材に手を出す必要がありません。

パーフェクト算数教室

 上記の「P' / P >1」について割合を用いて話を進めてきましたが、「P' - P」を差分Sとして置く事で以下のように変形できます。

  • P' / P > 1
  • P' > P
  • P' - P > 0
  • P' - P > 0 = S
  • P' - P - S > 0
  • P' < P + S

 この定式はまさに「あるべき姿 < 現状のケイパビリティ + 課題」の式となります。また「C'/C < P'/P」を満たすことで価値を上げることができるため、以下の式が導出されます。

  • C'/C < P' / P
  • P' > PC'/C

 以上のことから下記2つの条件にマッチする施策は価値を引き上げる事が可能であると言うことができます。この式より、Sを最大化しつつ、C'/Cを最小化する事が求められる事が理解できると思います。

  • P' < P + S
  • P' > PC'/C

まとめ

 ここでCは現状のコストですので、現状が主体なし目的なしの過程によってあるべき姿に対して近距離になった場合において僅かな追加コスト(=C'/C)でP’を超えて飛躍するSを叩きだすことになります。P'とPの差分が大きい限りにおいてコストは増加してもよいのです。

 「P' - P」は機能の差ですが、機能には価値工学の第一原則「使用者優先の原則」が適用されます。ここで「P + S」が<私>にとっては手段が卑近(=C'/Cが小さい)であったために小さな事であると感じていたとしても、現実に師匠の実績と同等の実績を解除したことを見た第三者たる使用者は「P + S」を大きなものに感じることになります。

 くり返しになりますが「機能」において手段は隠蔽可能なのです。わざわざ簡単に出来ることを示すために手段を開示して、文字通り価値を下げる必要性はありません。以上により生存戦略について価値工学理論の観点から算数としての根拠を示しました。吝嗇キャラにされがちだけど、ちゃんと根拠があって言っているんだからね!

CD 東方氷雪歌集

CD 東方氷雪歌集

関連記事