太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

サラリーマン内で「持ち込み可能デバイスとしてのスマートウォッチ」が流行った場合にクールな「iWatch」は不利かも


(image source:Thomas Bogner氏)

スマートウォッチの発表が相次ぐ

 スマートウォッチとは、腕時計型のコンピュータであり、小さいiPhoneが腕時計になってるようなイメージです。既存のスマートフォンとの無線連携が前提になっている場合も多いようで、例えば以下のような使用レポートがあります。

業務時間中のスマートフォンはマナー違反?

 どころで、ここ数年で会社内を歩きながらであったり、業務時間中にスマートフォンを見ていた云々という注意喚起を受けた話を聞く機会が増えたように思います。実際にはTODOやカレンダーの確認に使っていて、必ずしも遊んでいるわけでもないとは思うのですが、会議中に出したりするとビジネスマナー違反と見なされがちな側面もあります。

 その気持ちは分かります。昔デート中に『フォトカノ』を遊びはじめられた時は流石にちょっと怒りました。スマートフォンのソシャゲならともかくPSPて。『ラブプラス』じゃなく『フォトカノ』て。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』にもそういうエピソードがあった時はちょっと吐きそうになりました。男性用の恋愛ゲームが好きな女子も意外にいるんですよ!念の為。

 この下りは特に必要なかったけど、兎に角「業務時間中のスマートフォンはマナー違反」って事を声高に主張したい人が上の世代になるほど多いようです。職場によっては持ち込み禁止にされる勢いですし、『https://blog.livedoor.jp/ykrsokuho/archives/33743713.html』なんて事までされているようです。

BYODを可能とする結界破り

 そもそも、セキュリティ上の問題で私用のコンピュータやタブレットの持ち込みが禁止にされている職場は多々あります。タブレットスマートフォンは機能的にら殆ど違いがありませんので、持ち込み禁止にされてもおかしくありません。それでも「電話」というテイにする事によって暗黙の了解で持ち込みが出来ていたんですね。

 逆に『ポメラ』はいくら通信機能のない単機能エディタであっても、使ってれば咎められるでしょう。「結界」に入るためには本質的な機能よりも「形」こそが重視される文脈が多々あるのです。以前、システム手帳について以下のような事を指摘しました。

 以上までが一般的な紙のメリットですが、IT企業に勤めている私にとって最重要なメリットは「手帳はシステムセンターにBYOD可能なデバイスである」ということが挙げられます。ここでいうBYODとはBring Your Own Devceの略であり、自身のデバイスを職場に持ち込んで業務に活かすということです。

 ノマドワーカーの方々にとって自前のMacbook Airが持ち込めない現場は地獄なのかもしれませんが、セキュリティという論理結界下にあるシステムセンター内に私物パソコンが持ち込めるわけもありません。持ち込める電子機器はせいぜい私物携帯電話ぐらいで、それでもマシンルームに入る時に預けなければなりません。万が一マシンルームに入れてしまうと始末書を書いたり、個人情報保護当の観点から内蔵データをフォーマットしてからでないと持ち出せなくなる可能性すらあります。

 しかし「ノート」であればマシンルームまで持ち込み/持ち出す事が一般的には可能です。そしてマシンルームに「ノート」いう範疇で持ち込み可能なデバイスの最大スペックのひとつがシステム手帳となります。紙は神のごとくデジタル排除結界の影響を受けにくいので、マシンルームというデジタル空間においてこそ、システム手帳はその強さを逆説的に発揮できるのです。


「腕時計」ならカモフラージュできる?

 その前提において「スマートフォン」の持ち込み可能デバイスとしての結界破りの能力が下がってきているのだと思います。普及しすぎたし「マナー違反」という声がどこからでも上がるようになれば仕方のない事でしょう。

 即座に持ち込み自体を制限するとは考えにくいのですが、業務時間中に使っているところを見つければ人事評価の低下や注意の材料になる機会は増えていくのだろうとも思います。実際問題としてタスクやスケジュールの確認をしているのが主なので、見てる時間は一瞬なのです。いくらイベント開催中でもぷよクエを業務時間中にしてることなんてありませんし(震え声)。それでも取り出して眺める動作は目立ってしまいます。

 そこで出てくるのがスマートウォッチです。「腕時計を見てた」と怒るひとはまだ少ないでしょう。もちろん歩きながらはダメでしょうが、時間のついでにTODOを確認することまで咎めるのはよほど注意して観察しないと難しいと思われます。これは接客業でも重要な観点かもしれません。『大西 宏のマーケティング・エッセンス : スマートウォッチがヒットしない理由』では「時計のカタチを踏襲したものばかり」と否定論が語られていますが、日本の残念な現場でこそ「普通にクラウド連携できる腕時計」が求められるんですよってのは感じます。

その証拠に、どれを見ても時計のカタチを踏襲したものばかりで、なにが新しいか、どう日常を変えてくれるのかが視覚的にも伝わってきません。スマートウォッチとはなにかという肝心のコンセプトの創造に失敗しているからでしょう。それなら普通の時計のほうがはるかにアクセサリーとしてすぐれているように感じます。

メガネにコンピュータを装着するGoogleGlassについてもそうですが、ウエアラブル・コンピュータでは、技術がチャレンジする方向性やビジョンでしかなく、製品としてのコンセプトとはいえません。
なぜならコンピュータを身につけるというニーズなど誰も持っておらず、なにか新しい体験ができたときに、その体験が魅力溢れるものなら、結果として身につけるかもしれないというあたりまえが忘れ去られているからです。ニーズを創造するコンセプトや、そのコンセプトに基づいたデザインや機能、またそれで得られる体験がなければただの技術の見本市に過ぎません。


腕時計のカモフラージュの視点で見るとiWatchは微妙かも

 AppleがだすスマートウォッチことiWatch(Apple Watchと発表されました)関連の情報が飛び交っていますが、この視点から見ると「クール過ぎる」のはダメなんじゃないの?って思います。あくまで「普通の腕時計」っぽく見えることが需要とマッチするでしょう。

 アイキャッチの画像を含めて、こういう感じのクールなコンセプトだと日本ではコケそう。身につけるものだからこそ「奇異な目線」の存在って案外重要なのではないかと。なのでメーカー各位には「普通の腕時計」として限りなく他の人に違和感を抱かせないニーズを満たす製品を作って頂けると勝機があるのではないでしょうか。腕時計でパズドラとかぷよクエができれば体力回復を無駄にしないしね。そういう諸々が下らないのもあって、在宅勤務にしたいのだけど。