太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

輝かしい偽記憶のための偽ライフログ

メメント・モリ

夏も冬もコミックマーケットに行けていない

 今年は夏も冬もコミックマーケットに行っていない。もともと冬コミは帰省のタイミングにぶつかるので殆ど行かない。夏コミの1日目には行ったような気がしていたが、Twitterを調べたら実際には行ってなくて、一昨年の記憶と混同していた。

 流石に完全になかった事をあったと思い込む事は少ないが、実際に何度かある事だと「時期」や「文脈」を混同してしまう事が増えた気がする。例えば、Aさんのやった事をBさんがやったと思い込んでいたり、過去の呑み会の参加メンバーを間違えていたりする。

文脈の切除

 『闇金ウシジマくん』のドラマ版では、「漫画の名シーン」を断続的に再現しながら時系列や登場人物が無茶苦茶になっているという離れ業をやっていて、「カーニヴァル」を演じさせられる人々の刹那さを感じさせた。人間の記憶にも、そういう所があるのだろう。

 現在はブログや手帳やTwitterやEvernoteなどがあるから、記録を辿ろうと思えば辿れる。もちろん「自分の記憶が怪しい」と疑っているから辿るわけで、そうでない時こそ間違いはある。それでも最低限の情報ソースを確認しないで印象論を話してしまったら、非常に「恥ずかしい」という感情を抱いてしまうのだけど、世の中は案外そうでもないらしい。全く別の文脈の話が勝手に紐付いた偽記憶を燃料にして怒り続けている人に辟易とさせられた事がある。

偽記憶の意味

 『長期記憶を捏造しないために『ほぼ日手帳』を使いたいけど三ヶ月坊主が怖くて買うた辞めた音頭をした話 - 太陽がまぶしかったから』を書いた時に、「偽記憶ってそんな怖いのか? 検証できない記憶なんて都合よく作ればいいのに 後で見て気に入らないことは記録があっても削除や改変してる」というブックマークコメントがあって、良いとか悪いではなく、事実としてそういう考え方もあるのだと知った。

 本来、私的な歴史について語る時に捏造可能なのは物理現象に応じた「当時の気持ち」だけである。だから「他者の気持ち」なんてものを信じていないし、理解する気もない。そんなものを推定しても、されても無駄であると思っていた。

 その一方で「今の気持ちに沿わない事実は改変する」という地平にまで「自分の気持ち至上主義」が強い人もいる。記憶の順序や文脈を改変してまで独自のストーリーを作り上げる人がいるのを観察するほど、メンタルを守るためには必要な行動なのかもしれないと思う事もある。

 信頼出来るログを読まない状態で「私の生きるテンションは、10年前から一定して毎日そこそこ楽しいみたいな感じです」と言うのは直近2ヶ月ぐらいから算出された不合理な判定である可能性が高いですし、その判定を重大な決断に使うのは極めて危険な行為です。「昔からこう思ってた」とつい言いたくなってしまうのですが、本当にそうなのかは疑うべきです。

「当時の気持ち」を改竄する

 実際には不正確な記憶から物事を認識している人が殆どであり、「当時の気持ち」に対する改変を意識的に行っているわけではないのだろうと思うのだけど、なんというか一定の羨望も感じる。「お酒と恋愛は『現実と論理の世界』から遠ざけてくれるから重要」とちきりんが説いていたが、そんなものを効用の前提にして求めてしまう事自体が本当はおかしいのだろうとも思っている。

 「今年も夏コミに行って楽しかった」とでも思い込んでいても良かったのかもしれない。「直前に別の現場のヘルプに拉致されて、ただでさえ体調が悪かったのに疲労が溜まっていて、その状態で灼熱のビッグサイトに行ったら倒れるんじゃないかと思って自重していた」なんて事を思い出していたら「現在の自分の気持ち」を疎外してしまった。

輝かしい偽記録を作る

 最近、「偽ライフログ」に興味がある。Facebookなどにポジティブな活動を「盛って」記録し続けてる人々が不思議だったのだけど、後から読んだ時に「今の自分の気持ち」を高めるために使えるのかもしれないと気づいた。僕自身も仮想人格を憑依させて書く事が多々あるのだけど、それが「本当の気持ち」だったと後から思う事があるのかもしれない。記憶なんて放っておけば都合よく改竄されていくのだから、出来る限りの整合性を満たしながら偽の記録を続けていれば、現実認識の言語論的転回を起こす儀式となる。

 『メメント』という映画では、自分の記憶が10分間しか保たないので、体中に記録を書いていくのだけど、まさにこの「偽の記録」が鍵になっていたりする。10分間は大袈裟だけど、10年経てば詳細を覚えていない部分も出てくるのではないか。最初から恋心なんて抱いていなかった。このブログは未来の自分や周りの人々の心を守るために「偽ライフログ」という「鎮痛剤」を生成していく物語である。

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