太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

「文章の音声読み上げ」と「音声の書き起こし」のサービスが増えてくることで、コンテンツファースト化とメディア変換可能性の上昇が進むのだけど、「特定メディアだからできたコンテンツ」が減るのは寂しい

photo by John G Meadows

音声化と文章化

 最近のWeb業界では、文章の音声読み上げ需要と、音声の書き起こし需要が同時に高まってきてると思う事があります。例えば『LisgoでPocketの記事を聴くと情報収集が捗る!これは神iPhoneアプリ! | らふらく^^ ~ブログで飯を食う~』ではPocketに入れたブログの内容を音声で読み上げてくれるし、『オーディオブック配信サービス - FeBe(フィービー)』ではビジネス書を中心にオーディオブックを安価に販売しています。

 その一方で『http://radiokoshi.net/』ではラジオの音声を文字起こして文章で読めるようにしていますし、有料メルマガの目玉コンテンツとしてトークイベントの文字起こしが使われる事も多いです。音声認識技術も上がっています。

 僕自身の事を考えても、移動・家事・運動などをしている時は音声で聴きたい事のが多いので、オーディオブックやPodcastを聴いている時間はそれなりに長いです。最近になって『Lisgo』を知ったので「あとで読む」文章を音声化して聴いている事もあります。

 でもテレビやラジオをリアルタイムで視聴する事はほぼなくて、気になるテーマで文字起こしをされていれば読む事があるぐらいの距離感です。「ラジオ音声→文字起こしで話題→機械で音声読上げ」なんていう馬鹿なフローすら生まれてきています。

コンテンツファースト化するメディア

 同じコンテンツが複数のメディアで受容できるという「メディアミックス」と言えば、本来的には一定のクオリティが保証されているからこそ予算や手間暇をかけて行われてきたという経緯がありました。ですが現代では変換処理の手間が減った事によって、ロングテールなコンテンツに対しても気軽にメディアミックスが行われるようになって「メディア変換可性」が上昇してきたということでしょう。同じような流れは電子書籍自費出版などにも見られますが、「読み上げ」と「書き起こし」は相互関係にありつつ、決して最適ではないという状態が興味深いところです。

 身も蓋もない事を言えば、音声を聴きたいときにはラジオを聞けばよいし、文章が読みたい時は本やブログを読む事にしていれば、最初から最適化されていますので、メディアを決めてからコンテンツを選んだ方が良い事のが多いと思うのです。「メディアファースト」とも言うべき状況ですね。

 これに対して先にコンテンツがあって、それを受容するためのメディアを選択できるという「コンテンツファースト」ともいう状況を選んでいるというのが少し不思議な感覚です。自分の気持ち至上主義として、コンテンツとメディアの組み合わせを含めて「いま」「ここ」の気分にフィッティングできる事に価値を感じるのでしょう。

あるメディアだから許されていたコンテンツの行方

 「コンテンツファースト」は消費者としては確かに便利なのですが、「メディア変換可能性」 が上昇する事によって、例えば深夜ラジオやニッチな雑誌だから過激な事ができて、それを適切な人だけが楽しんでいた状況が消え去ってしまうのではないかという危惧もあります。

 『痛いニュース(ノ∀`) : 「私が人脈持ってる人間だとわからないの!?」…吉本ばなな氏のエッセイを紹介したサイトが話題に - ライブドアブログ』なんかが話題になっていましたが、このようなエッセイは本人のファンのみが読むというバイアスありきの過激さや無防備さが面白さの要素にありました。深夜ラジオの企画にも狂ったものが多々あったと思います。それが当たり前に文字起こしされて文脈を切除して検索も可能な状態にされると言われると途端にかしこまってしまうみたいな事が起こってしまうのではないかという事です。

 文章においても読み上げされる事が前提とするのであれば誤字脱字や悪文は致命的な違和感になるし、漢字や「(笑)」なんかも邪魔になるわけで、エクリチュールとしての勢いだけを重視するような書き方については、ある種の手加減が入ってきてしまうのではないかなんて事があります。書く側からすると読み上げをさせて誤字脱字や悪文をチェックするのは非常に便利なのですが、ブログで書き散らかしているような文章にまでそれをするのはちょっと辛いです。

コンテンツを別のメディアに変換されて受容される可能性が上昇した世界

 そういう危惧みたいなものはありつつも、逆に音声で聴くと面白いブログなんかも発見したり、ラジオで話される「いい話」って全然こちらまで到達しない事が多かったのだけど、それが減るというのは良いことです。特に改行が少ない系の文章だと、目で読むだけだと全く頭に入ってこないのに読み上げさせると良くなるなんて事もあります。

 もちろん、そう簡単には浸透しないとも思っているのですが、「コンテンツファースト」と「メディア変換可能性」についても目線を配っていく方がよいのかなーなんて思いました。考えてみれば、このブログもスマートフォンでの表示形式にこだわってたな。

5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?

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