太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

小山ゆうじろう『とんかつDJアゲ太郎』〜アガる音楽でMIX<交じり>あうトンカツとクラブカルチャー

とんかつDJアゲ太郎

 ライブハウスにはそれなりに行くのだけど、クラブには行った事がなくて中で何が行われているのか未だによく分かっていない。だから「DJはとんかつに似てる」と言われても「はぁ……?」と思うだけであった。認識解像度を下げれば天下一品だってスープカレーに似ている。はじめに言葉ありき。万物は言葉によって分割される。

 そんな事を思いながら読み始めた『とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)』。冒頭のとんかつカラーグラビアに面食らいながらも、手繰っていくページが止まらない。これはブログの話に似ている。とんかつ屋はDJに似ているし、DJはブログに似ている。グルーヴの中で僕らの境界線は融け合い、ひとつになる。

とんかつ屋とDJとブロガーって同じなのか!!!???

豚をアゲるか客をアゲるかに大したちがいはねぇ!!
重要なのはオマエがグルーヴを感じるかだ!!!

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

 大枠としては『ベスト・キッド コレクターズ・エディション [DVD]』のDJ版である。クラブカルチャーに出会ってからというもの、とんかつ屋においても、客を観察する注意力や、肉を柔らかくする下ごしらえを意識するようになって、それがDJのプレイにも活きてくる。「とんかつもフロアをアゲられる男」になるために、仕事や仲間を通じてまっすぐに成長していく姿がアツい。とんかつ屋とDJは同じなのである。

 読み進めるうちに、DJとブログの相似形にも気づいてきた。サーバーや執筆環境などの機材を整えて、リアルタイム訪問数やシェア数などを見ながら文章や導線を調整して、自分の好きな書籍やニュースをDIGって読者をアゲていく。そこで必要になるのは純粋な技術だけではなく「バイブス」であり、つまりブロガーとDJは同じなのである。

世界をひとつの視点で切り取る想像力

 DJをやっている友人が「DJをやるようになってから、新しい音楽を聴くモチベーションがアガる」と言っていて、そういう側面もあるのだろう。僕もブログをやるようになってから、新しい本を読むモチベーションがアガったし、とりあえず試してみようとする機会が増えた。なんでも、好きな事に例えたくなったり、好きな事に活かそうと思える病気を発症しているからこそ見える世界の輝きがあるのだろう。

 もちろん、それは「認知の歪み」なのだけど、この世界を全く歪みのない認知で見ることはできないし、歪んでいないことと幸福である事は相関しない。この事はユクスキュルが提唱した生物学の概念である「環世界」という考え方で説明される場合がある。

 マダニの世界は「温度と酢酸の匂いと触覚」だけで出来ています。物理的な世界は同じなのに、認知している指標によって世界のあり方は変わるのです。同じ人間でさえ犬が判別できる臭いや音を一般的には感知できないですし、4原色で見える眼を持つ人も居ますし、障害を持っている人もいます。

MIXさせ続けさせてねDJ

 ここで重要なのは、その認知の歪みに没入する事と、没入しつつも歪んでいる事を忘れない事、そして他者が没入している歪みを想像することである。「いま」「ここ」「わたしたち」にとって心地よい世界を作りだそうと試みる事は、そのままフロアをアゲる技術となる。

踊り続けさせてねDJ
want to come again
フロアをもっと熱く響かせて

come again

come again

  • m-flo
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 ロングMIXをミルフィーユかつに例えたり、クイックMIXを串かつに例えるのは他者から見れば頭がおかしいとすら思えるのだけど、ブログをコンビニに例えたり、プロジェクト進行管理を金融リスク管理に例えたくなってしまう自分を映し出す鏡でもある。僕らは言葉を使って世界を分割しながら、本当にアガれる何かをもって境界線の揺るがせる。揚げ音と雨音がMIX<交じり>合うようにね。

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

とんかつDJアゲ太郎 1 (ジャンプコミックス)

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