太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

「動く鎧」って食べられるの!?〜九井諒子『ダンジョン飯』

ダンジョン飯を召し上がれ

 『ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス(ハルタ))』は九井諒子の新刊で、ウィザードリィのようなダンジョンファンタジー世界において、金と食料を落としてしまった主人公パーティが、現地調達した魔物を料理しながら冒険を続ける物語である。当初はドン引き気味だった主人公パーティに、魔物料理を研究して10年のドワーフが加わって本格的なグルメマンガになる。読む前はミリタリー飯的な要素も多いのかと思っていたが、完全にモンスター料理である。

 話の構造としては『山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)』のように野生動物を捕らて、解体して、料理するという流れなのだけど、そこはモンスター。亜人植物の水炊きやバジリスクのローストなどの比較的味の想像がつきそうな魔物料理から、スライムやマンドラゴラ、なんと「動く鎧」まで、想像力の翼をひろげて食材としての特性や調理方法を探求する。

 「動く鎧」は一般的には魔法で操られた鎧という解釈なので、可食部なんて考えたこともなかったのだけど、ありえそうな解釈で食材としての特性が書かれていて、これわこれで納得感があった。酒蒸しとかが美味しそうね。他のモンスター達の味や食感や、それに合う調理方法を考えていくのも楽しい。ダンジョン内の「罠」を利用して調理するものもある。

モンスター料理への執着

 もともとモンスター料理にはちょっとした執着がある。『ゲームブックドラゴンクエスト〈上〉甦るロト英雄伝説 (エニックス文庫)』に、モンスター料理屋台にいくイベントがあって、以下のどれを頼むかによってHPの回復値が異なるという演出があった。

  • リカントの手とジャガイモのクリームシチュー
  • スライムと野菜のマリネ
  • ドラキーの翼と大サソリの甲羅の酒蒸し

 リカントは獣人であり、リカントロープ(狼男)が元ネタではあるんだろうけど、グラフィックは熊っぽいので「手が美味い」というのもなんだか分かる。「熊の手」は中華料理の高級食材だしね。スライムは火を通すと白身魚、生だとイカっぽいらしい。ハズレが「ドラキーの翼と大サソリの甲羅の酒蒸し」で、かみ切れないし、消化しきれないしでHPが減ってしまうんだけど、通には珍味として人気らしく一口食べてみたいと思わせる。

想像力としての調理

 20代の頃は食に貪欲で、様々な珍味を食してきたのだけど、味や食感を想像したり、入荷の連絡をもらう時までが楽しかったりもする。実際に食べてみれば、わりと想定の範囲内にあるのは仕方がない。グルメマンガの手法を使ったり、高級店にいってみても、美味いのは美味いけれど限度がある。

 グルメマンガは実際には食べさせないからこそ、その旨さを想像させる事ができる。そういう意味では、現実は存在しないけれど、それらしい食材に対して無限の想像力を働かせるのは、ひとつの方法なのかもしれない。マンドラゴラのかき揚げとか食べてみたいなー。

ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス)

ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス)