読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

ハンス・ロスリングと魔法の洗濯機、ランドロイド、暇つぶしの時代

ガジェット ガジェット-生活家電

let me unload the washing machine darling! - la scarico io la lavatrice amore!

ハンス・ロスリングと魔法の洗濯機

では何が魔法なのか? 私の母は洗濯機を初めて使った日に それを教えてくれました 「ハンス 洗濯機に 洗濯物を入れたから あとは洗濯機がやってくれる その間図書館に行けるのよ」と これが魔法なのです

 TEDの好きなプレゼンテーションのひとつに「ハンス・ロスリングと魔法の洗濯機」がある。全世界のうち20億人という自動車よりも広く普及した洗濯機は、世界中の人々から生きていくための重労働であった「洗濯」を代行し、その時間を教育や別の仕事に使えるようにした。洗濯機によって発生した「暇の累計」は途方もないスケールとなる。

 ここ最近のトレンドを考えると、「魔法の洗濯機」に匹敵するような技術が深耕されてきているように感じる。「教育や別の仕事」の必要性すら奪ってしまうぐらいに。

魔法の機械学習

同社の査定関連部署には15年3月末時点で131人の職員が所属する。支払いの最終判断などには従来通り専門スタッフが関わるが、診断書の読み込みなどの事務作業はAIで効率化できる。同社は既に、導入を見越した業務見直しで段階的な人員削減に着手。5年程度の有期で雇用している職員47人を中心に、17年3月末までに契約満了を迎える人の後任を補充しないことなどで、最終的に計34人を削減する。 (出典:毎日新聞 2016/12/29)

 2016年最大のトピックは、AIや機械学習の実用化であった。AIといっても「全部」をやらせるのではなく、マーケティングや保険査定などの初期判断であれば人間よりも正確かつ素早くに行える段階になったということ。それを実現するためのアルゴリズムをスクラッチで作る必要すらなく、これまでの判断蓄積を読み込ませて、法則が帰納的かつ機械的に作られることが革新的であった。

 ニューラルネットによってGoogle翻訳の精度が大幅にあがったことも記憶に新しい。過去の膨大な翻訳文から法則を帰納的かつ機械的に生成することで、専門家がアルゴリズム的な改善を試みるよりもよい成果ができる現実。すべての分野に適用できるほどの万能さはないが、その応用範囲は広い。

 すでに人員削減の話に発展しているが、少数人の高度な専門家を除けば、深刻な「暇」を生み出す可能性が高いだろう。生産量が減らないのであればベーシック・インカムなども検討されるが、その先のことは分からない。

全自動衣類たたみ機

 全自動洗濯機がでてきても、洗濯物を干して、乾いたらたたんで収納する必要がある。それらは面倒である一方で、作業の主体は人間であり、洗濯機はあくまで補助に過ぎないといった主従関係を成立させていた。しかしながら、全自動洗濯乾燥機によって「干す」という工程はなくなり、たたんでタンスにしまう作業の自動化さえも実用化に近づいているという。

ランドロイドを使えば、洗濯物をたたむ時間を家族で過ごす時間や趣味に没頭する時間に使える。また、衣類を散らかすことなく部屋をきれいに保ったり、毎日の家事の習慣を変えたりすることも可能だ。

 例えば、ランドロイドの通信・学習機能を生かし、昨年着ていた服のコーディネートや服の着用頻度などを知らせるサービスを始められるかもしれないという

 ランドロイドまでくると「洗濯の補助」をする家電ではなく、完全な代行ロボットとなる。水拭き可能な全自動掃除ロボットや、全自動ピックアップロボットなどもすでに実用化されている。

 ある分野に特化した反復行動を学習して、それを無人格なロボットが代行することで、人間の介在を不要とする。SFじみたロボットはまだまだ先だし、人間の方が安いという身も蓋もない状況もあるけれど、人が自分の手を動かす理由は徐々に減っていくだろう。

「魔法」の成果をどう使う?

 これらの魔法は再投資を前提とした「利息」を発生させるために発達した技術である。風車による「13世紀の産業革命」からはじまった無人格的な労働代行から複利的に発展してきた歴史を受け継いで、今日の社会は存在する。アーサー・C・クラークは「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」といったが、魔法が魔法であるためには「実現の困難さ」ではなく、「累計の暇」をどれだけ発生させたかという観点も必要となる。

 その一方で、この暇をどこに再投資するのかが、よりシビアに問われる。「小人閑居して不善をなす」が、手を動かしていればまぎれた諸々の意味がなくなったときに、それでもやるべきことはなんなのか。特別な才覚のない自分は、健康で文化的な暇つぶしの方法を考えておく必要があるのかもしれない。「魔法」の成果をどう使う?