太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

綱島温泉にて、茹でがえる

そうだ 温泉、いこう。

 長期休暇を取ってドヤ街に行く予定が、五月雨で転職活動や仕事のアポが入って行けないでいた。1時間の打ち合わせをするためにだって、事前準備や移動時間や移動費でそれなりに消耗していて、あまり休めているわけでもない。

 会社員として現場周りをしている時は、例え短期的な成果が出せなくても給料は入ってくるが、フリーランスとしての仕事も転職活動も最終的な成果がでなければ報酬がゼロになってしまう。いくら過程を積み上げても賭け金はかえってこない。自分が完全なフリーランスとして働いているイメージが湧かないのはその辺にある。

 今週も無為に過ごす予定になっていたが、アポの予定や見込みがたて続けてキャンセルになった。いまさら予定を入れるように動いても仕方がないし、これもひとつの機会であろう。温泉街にて自己療養の試みをするときがきたのだ。

綱島温泉は理想のシェアオフィス

 まずは箱根を連想したが、旅館は二人部屋ばかりで独り旅のハードルが高いし、作業出来る場所が望ましい。そう考えると綱島温泉は1日1,000円で座敷や温泉が自由に使えるし、飲食の持ち込みも自由だし、テーブル席もあるわけで、理想のシェアオフィスなのかもしれない。焼き鳥もかえる。

 平日の昼間から温泉施設にいる人は流石に少ない。殆んどがお年寄りだ。持ち込んだ特選ロースカツ弁当を食べて英気を養う。畳に座りながらMacを使っているとおしりが痛くなってくるが、それがノマドワーカーとしての痛みである。テーブル席にかえる。

 温泉は相変わらず黒い。冷たい水風呂に入って、熱い風呂に入って、電気風呂に入る。水属性、火属性、雷属性。多様なガジェットを持ち歩くノマドワーカーといえども、温泉の中にはiPhoneだって持ち込めない。バスタオルを持ってこなかったので、ハンドタオルを絞っては身体を拭く作業を延々と繰り返す。Don't repeat yourself.という主義をかえるのも乙。

綱島温泉にて、茹でがえる

 風呂あがりに裸足になって畳を歩くのが気持ちよい。テレビには相撲が流れているし、演歌のカラオケがBGMになる。「温泉で療養」というミームから志賀直哉の『城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)』を想起。事故で負った怪我の療養している温泉街にて、かえるが気まぐれで投げられた石に当たって死ぬ。電車が止まって家に帰れなくなったあの日を経ながら生きているだけでも、それなりの奇跡だと思う事もある。それはぬるま湯なのかもしれないけれど。

なぁなぁあんたさ伺いますけど
かえるを茹でたことはあるかい
アンダンテくらいでアルデンテすれば
気づかず茹だるのさ
これで誰でも騙せるさ

かえるの唄

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 2匹のカエルを用意して、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに脱出するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する。そんなニセ科学を思い出しながら温泉で茹でがえる。温泉かえるは熱湯に入れられた時点でショック死するから飛び出せないし、少しづつ熱くなったら飛び出せるのが現実世界の理だ。

 捏造でも、良いマナーなら普及させればいいじゃないか、学校で教えればいいじゃないかと江戸しぐさ。かえるは熱湯から飛び出したら石に当たって死んでしまうかもしれないと志賀直哉。僕がここにやってきたのは、東京を壊滅から救うためですと村上春樹。これで誰でも騙せるさ。まだまだ楽園からかえるのは勿体無い。

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