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太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

アイドルや声優の結婚発表は安全に痛い感傷を発生させるアトラクション

自意識 自意識-婚活

Idol!

わかっていたよ、おいらじゃダメさ

 好きなアイドルや声優が結婚をしたり熱愛報道されると、むしろ安心するというか、「わかっていたよ、おいらじゃダメさ」という感傷に浸れる安全に痛いエンタメ装置として消費していることがある。関連グッズを全部捨てたり、敵意を向ける人も多いみたいなのだけど、僕の場合はその瞬間がひとつの頂点となる。

裏切りの街角

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 これは、NTR(ねとられ)願望とは少し違う。僕自身の自己愛が満たされる瞬間はコフートが言うところの「理想化自己対象体験」であることが多い。

 世間一般では、自己愛の充たしかたというと、自分自身に称賛やアテンションを集めたり、チヤホヤされたりするしかないとみなされがちだが、正反対に、称賛やまなざしや承認を、理想の相手に投げかけている時にも自己愛が充たされる、のだ。

理想の対象を介して自己愛を充たす――汎用適応技術研究

 よって自分程度からの眼差しに満足されているうちは真に理想化が達成されず、いくつかの過程を経ながら次のステージに進んでいき、見込んだ通りに「おいらじゃダメさ」となった瞬間に満たされるのだ。この辺り、僕のことを好きになるような人は、好きになれないという問題をはらんでいて根が深い。

アイドルは安全に痛い感傷を発生させるアトラクション

 こうして一級フラグクラッシャーが生まれたのだけど、日常生活でそういうことを続けていると、どうしようもないクズになってしまうので、アイドルや声優を代替するようになった。そもそも理想化自己対象になりやすい素質を持つからこそ彼女たちはアイドルなのだ。いつか終わる瞬間をメタ認知しながらも行動療法的に没入し、ロウソクが消える瞬間のきらめきを何度も繰り返す。

 アイロニカルな没入は絶対安全剃刀のようなもので、痛いけれど血はでない安全に痛い感傷を発生させるアトラクションである。今はただ「わかっていたよ、おいらじゃダメさ」と呟く未来を幻視できる人を好きになりたい。終わった後に何も残らないからこそ描ける軌跡もあるのだろう。

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