太陽がまぶしかったから

C'etait a cause du soleil.

使うアテのなくなった結婚資金で優待株を育成して振り回されたい

成長や育成の実感がほしい

 僕の人生に欠けてしまったものを端的に言えば、「時間が育ててくれるもの」なのだと思う。朝、目が醒めたら自分の周りが少しだけ良くなっていることへの期待感を燃料してきたというのに、成長よりも老化に向かっていくことしかできない自分だけの未来を見つめる絶望感。

 独りが辛くなるのは時間が育ててくれるものがなくなったと気づいた時なのだ。自分だけの未来を見つづけていても、あまり楽しくないし、疲れてしまう。恋人と会えない時間に深まっていくものがあったり、子供の成長を見守ったりするのはそういう人生における倦怠期への特効薬になりえる。せめてその期待はさせてほしい。

 この絶望感を癒やすための試みは必ずしも近しい「他者」がいなくてもよい。投資、アイドル、植物、ペット、ソシャゲ、フィリピンパブ。ブログの数字に拘る人々のなかにはそういった育成要素を求めている人々もいるのだろう。自分自身の圧倒的成長を考えるよりも幾分か自律的に変わってくれる。学習性無力感に支配されると、パーソナル・コントールの不可能性の種を蒔くことこそが希望なのである。平凡なアタシになぜかベタ惚れされたい。

使うアテのなくなったお金の使いみち

 将来の冠婚葬祭に備えてなんとなく積み立てていたお金が満期になったのだけど、当面は使いみちがなくなった。定期預金に入れなおしたところでマイナス金利の状況下では大した利息が望めないし、ただの数字として死蔵している感覚が強い。バカンスに行くには忙しいし、都内に住んでいると車を買う必要がないし、Macbook Proはまだリニューアルしない。自己投資の効用も著しく下がっている。

 そう考えると、優待株はいいぞと。優待株とは規定日時点で規定数以上の株をもっていると粗品を送ってきてくれる株のこと。例えば吉野家株を100株持っていると半年ごとに3000円の食事券がもらえる。現時点の価格だと1,380円/株なので、138,000円で半年ごとに3,000円もらえることになり、年間4.34%の優待利回りが見込める。それ以上に株価が下がる可能性もあるのだけど、現物購入であれば購入金額以上のリスクは無い。なによりも成長した結果を少しづつ還元してもらえる感覚になれる。

 30歳を超えて「これから頑張ります」「これから成長します」なんてのは殆んど通用しない。既にこれだけの経験(元金)があるなら通常の努力で維持できる成果(利息)だけでも要求水準以上のメリットがあるという見込みが市場価値となる。

 この警句は自分に向けてのものであって、自分の手を大きく動かさなくても手に入れられる領分を増やしていかないと心身が辛くなっていく実感と焦りがある。事実上は「切り崩して」いるのかもしれないけれど、見た目上の「利息」がほしい。どう考えたって効率の悪い月額分配型の投資信託が老人を中心に人気なのもきっと同じ欲望に基いているのだろう。多分。

安全に痛く振り回されたい欲望

 コントロール不可能性を内包した成長を願うのは「痴人の愛」のように他者に振り回されたい欲望でもある。子供の将来に頭を悩ませたりしたい人生だったし、安全に痛くスイングしてくれるヤンデレ彼女は現実世界に存在しないのだけど、余剰資金で購入した現物株の上下は安全にエキサイティングである。

 ともかく、僕は優待株を買ってしばらく気絶することにした。気絶しているうちに事態が好転するかもしれない要素を持っておくと生きることに少しだけ意味を見出すことができる。朝に起きたらLINEの通知件数が増えていることを期待していた日々と同じぐらいってわけにはいかないけれど。

桐谷さんの株主優待ライフ

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